レベルを高く保つということ

先日、会社で購読している「細胞工学」という専門誌を読んでいたら、エッセイのコーナーにPCRの説明がありました。PCRと言ってもDNAを増幅するポリメラーゼ チェーン リアクションのことではありません。「パー チェーン リアクション」の略で、アホは感染するということを言いたかったようですね。その研究者曰く、どんなに賢い学生もアホな学生2人に囲まれると、たちまちアホになると。人間は安きに流れがちですから、という説明でした。


確かに、周囲の環境から期待されるレベルが低いと、これぐらいでいいやとなりがちです。ですから、なるべく研究室配属では優秀な人が集まるところで切磋琢磨したほうがよいと助言されます。私の会社の親会社も名門だけあって、入社したての頃は野心に燃える優秀な面々が集まっていたはずなのに、終身雇用の悪影響がモロに出てしまい、保身のためリスクを避け、他の人に判断を任せ続けた結果、50の声を聞く頃には一部の方々の思考能力はゼロに。環境が変化しない場合にもPCRは起こってしまうようです。そして、またもや余談ですが、男女の仲というのも気持ちのレベルが低い方に規定されるようです。どんなに好きでも、相手が「友達」だと思っていれば、二人は友達になります。


私は仕事柄、全国各地の研究機関に出向いておりますが、ごくまれに「こんな田舎(と言っては失礼ですが…)にこのような逸材がいらっしゃるとは。」と驚くことがあります。研究者ではなく、秘書さんだったりしますが、訪問者に対しての並々ならぬ心配りには感嘆いたします。その研究所の雰囲気はいたってのどかなのですが、それに流されずに、自分なりに高い基準を設けて、守り続ける。誰に求められているわけではないけど、そうすることがご自分の美学なのでしょう。心からの歓迎の笑顔の裏に、そういう緊張が垣間見える瞬間があります。そのときに、私は「なんてデキる人なんだ。私も見習いたい!」と速攻で弟子入りしたい気持ちを抑え、感謝の念だけをお伝えして、現場を去るのです。