007 私をいじめた男

ある日のこと、「郵便でーす。」という声と共に、会社のデスクの上に、一通の封筒が置かれました。よくあるDMかなと思い、しばらく放っておいたのですが、なんとなく気になって、目をやると、そこには神経質そうで粘着質っぽくもある見覚えのある字が…。まさかとは思うけど、この筆跡はA君だったりして!?と裏面を見ると、予想どおりの名前が書かれていました。今更何の用事だろうか、10年以上会っていないし、そもそも私の勤務先は知らないはずだけど?キモイなぁと訝しく思いながらも、封を開けると、大学のサークルの同窓会の案内が出てきました。来年の3月に開催される同窓会への早々の招待状でしたので、調子よく「一応参加ってことでよろしく!」とメールで返答しておきました。

このA君とは大学の科学系勉強会サークルで知り合ったのですが、科学の議論をするはずの場で、全く空気を読まずに、どうでもいい自分の話を延々とする、時間泥棒みたいな奴でした。私が彼の傍若無人さに不機嫌になり、うつむいて黙っていると、九州男児のS君に「Kさんが下を向いて黙っていると、ものすごく恐いんだけど。女の子はいつも明るくにこやかにね!」と注意をされたものです。大学祭では、例年簡単な模擬実験の演示を行っており、その器具を運んでいると、なんとA君は重い荷物を運んでいる私のことをわざとエレベーターの扉で挟んだのです。こいつほんまにちょ〜むかつくわ!とあまりの怒りにしばらく口をきかなかったのですが、そんなクラブ活動状況に4年も耐えたとは、なんとも忍耐強かったね、と自分で自分を褒めてあげたいくらいです。

一時期、そんな犬猿の仲だったことを、苦々しく思い出しながら仕事をしていると、A君から返信がやってきました。どうも都内の私大で研究室を構えているとかで、紹介記事まで丁寧に添付されていました。そこに掲載されていた写真を見てビックリ!大学生の頃は少し華のある風貌でしたが、どこをどう探しても面影が見つかりません。眉毛も前髪もナッシング。…そのとき、私はA君のこれまでの悪行を許そうと思いました。それが女の度量ってもんではないかしらね?